平和憲法にもチャンスを!


憲法9条の下、戦後65年間、日本の平和は保たれてきた。憲法第9条は言わずもがな、「戦争放棄」と「戦力の不保持」を謳った条項だ。日本国憲法が「平和憲法」と言われる所以にもなっている。

改憲派護憲派

その9条を変えようという動きがある。変えようとする人々は「改憲派」と呼ばれる。改憲派の中には偏狭な思考に凝り固まった連中もいるが、多くはまともで、その主張には説得力があり、意見は傾聴に値する。
一方、憲法9条を守ろうという人々は「護憲派」と呼ばれる。護憲派の主張の最大の根拠は何より65年の平和の実績だ。なるほど、65年というのは中々インパクトがある。しかし、日本が戦争をしないで来られた理由は、本当に9条の存在だけで語れるだろうか?
今まで日本が戦争に巻き込まれないでいられたのは、アメリカの核の傘と、在日米軍の存在が大きいのではないか? 護憲派の多くは、この疑問を無視する。大変な欺瞞だ。

護憲派の欺瞞はもう通用しない

平和憲法を改正すれば、日本は戦争への道を突っ走る」という恐怖、「アメリカの保護がなくなれば日本は戦争を仕掛けられる」という恐怖が、戦争を放棄しながら、いざとなればアメリカの軍事力を頼るというダブルスタンダードを日本人に強いていた。
だからこそ護憲派の欺瞞にも存在価値があった。欺瞞は、ダブルスタンダードの間で股裂き状態に苦しむ日本人の「癒し」だったのだ。
だが、時代は変わった。アメリカの一極支配が終わり、世界は多極化している。アメリカの軍事力に頼り、自らは平和憲法を唱えるというこれまでの国防政策を変えざるを得なくなった。下手をすると、アメリカの軍事力を頼るために、アメリカの戦争に援軍を出すことを強いられる危険性さえある。
護憲派の欺瞞はもう通用しない。日本人は、自らの安全保障のため、自分達の力で何ができるかを考えなくてはいけない。では、一体何ができるのだろうか? 憲法を改正し、自ら軍事力を持つことだろうか?

まずは議論と検証を

戦後65年間の平和は、平和憲法によるものか、アメリカの軍事力によるものか、しっかりとした検証は行われていない。
軍事力が戦争を予防するという実績は、今まで世界中で積み重ねられてきた。しかし、戦争放棄が他国の攻撃を予防するという研究は、寡聞にして聞かない。そして近代以降、日本のような大国が65年間も平和でいられたという実績は、他に類を見ない。もしかすると平和憲法は、軍事力以上に、戦争を抑止する力があるのかも知れないということだ。
アメリカが日本のための血を流すという保証は消えた。これまでのようなダブルスタンダードは通用しない。しかし、だから改憲しなくてはならないというのは短絡だ。まずは、65年の平和に9条がどれだけ貢献してきたかの検証、そしてその検証に基づき、今後も9条が平和に貢献するかを検証してからでも改憲議論は遅くはないだろう。
改憲して重武装化すれば、今までにない脅威が出現することだって考えられる。周辺諸国の警戒が強まり、日本を敵視するようになるかも知れないし、同盟国の戦争に巻き込まれる可能性だって高まる。検証が済んだら、改憲を断行した場合のリスクとメリット、護憲を貫いた場合のリスクとメリットを冷静に見比べ、議論を尽くす必要があるだろう。

平和憲法にもチャンスを

検証と議論の結果、重武装しなければ、日本の未来はないというなら改憲もやむを得ない。しかし、戦争を放棄したまま安全保障も成立するならば、それに越したことはないはずだ。
これからの日本は、アメリカの保護を抜け出した「普通の独立国」として、また戦後65年間の平和の実績を積んだ「特殊な国」として新たな歴史を刻んでいく。だからこそ、護憲派には反省と再考を促したい。そして、改憲派にはこう訴えたい。平和憲法にもチャンスを!


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