菅総理には、自分たちのお姿が見えていますか?

菅直人氏が民主党代表に選ばれた。これで次期総理は菅首相で確実になった。政権交代という歴史に残る革命を成し遂げた鳩山内閣が八ヶ月で倒れて、今さらおめでとうもないだろうが、一応申し上げておこう。おめでとうございます。

「おめでとう」と言うのは、新内閣は、鳩山首相の首と引き換えに、旧自公政権時代に隠されていたアメリカや官僚との様々な「しがらみ」も把握できたろうし、去年の衆議院総選挙の功労者、小沢一郎氏の影響力もこれで一旦弱まり、地味ではあるが政策の実行に強い実務者中心の組閣も可能になったことからだ。もっとも、どんな内閣ができるかは現時点では不明だが。

しかしこの交代劇も、お寒いことはお寒くて、ただの党内の力関係以外に意味を見出せない「菅直人VS樽床伸二」というしなびた構図を見ても新たな風が吹いたとは言えないし、鳩山首相が国民に与えた政権担当能力への不信感の禊もまったく済んでいない。そもそも樽床さんって誰?

この「お寒さ」の原因には、現政権は現在の衆議院議席数で、仮に参院選に負けたとしても、あと3年間は安泰だという安心感もあるのだと思う。数の上では、それはそうなんだろうけど、「お寒い」ことは、実は民主党自体の存在意義さえ揺るがしかねない事態なので、新内閣は議席の上にあぐらをかいてないで、もっと危機感を感じるべきだ。

民主党の理念は、戦後65年間、いや明治維新以来140年以上に渡って続いてきた強力な中央集権制に基づく官僚国家から、地方分権で多様性を認め合う共生社会へ脱皮するというものだ。それはつまり、お上に負んぶに抱っこは止めて、自治体や中間集団など、国家よりももっと身近な小単位で、自分たちで自分たちのことは決定し、責任を負うという政治のあり方だ(小泉流の自己責任論と混同されないように断っておくが、彼の欺瞞は、中央集権を保ち、アメリカへの追従はむしろ強化しながら、そのコストと責任だけは国民に負わせようとしたところだ)。

高度に複雑化した社会では、中央集権に基づく国家という大単位では素早い対応が不可能だし、票の大小だけで決まる多数派が、どうしても少数派を犠牲にしてしまう。地方分権は、小回りが利く小単位で話合うことで、素早い決定も、それぞれが折れ合える折衝点を探ることも可能にする。また、それぞれの集団で高度に専門化した問題も、大きな行政単位によって何年も先送りされるような事態に陥ることなく、自分たちで解決する権力と能力を持つことができる。これが政権交代が革命である所以だ。

ここで先ほどの「危機感を感じるべき」というところに戻るのだが、果たして政策通でも政局通でもない一般国民が、民主党のこの「お寒い」代表戦を見てどう思うかな? ますます政治は自分たちと関係ないことだと思ってしまうのではないかな? こんなことをやっていて、これからは地方分権の時代です、自治の時代ですなんて言っても、メッセージは伝わるかな? 「お寒さ」に拍車がかかり、氷河期に突入してしまうのではないかな? 鳩山首相が辞めたからと言って、国民が再び「聞く耳」を持つようになるわけではない。

自分で自分の内閣を統治することもできず、その挙句に(菅さんと樽床さんには悪いが)ぱっとしない二人の代表戦。政局上、あるいは政策上は意味のあることかも知れないが、見た目上はなんとも情けない事態である。民主党が理念を語るとき、「てめえはどうなんだよ!」と突っ込まれかねない事態である。次期総理、あなたはご自分たちの姿が国民目線でどう見えるかを意識していますか? 私は新内閣に期待するが、この交代劇の「見た目」が持つ意味を、自分たちの存在意義と照らし合わせて、よくよく考えて欲しい切に願う。あるいは、私の心配が杞憂に過ぎないことを…。

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