エコミュニケーション商品

コモディティー化に不況が追い討ちをかける現在、政府と企業は一丸となり、エコをテコに、新たな需要を喚起することに必死だ。本当に環境に良いことを追求するなら、エコ替え、つまり環境対応型製品に切り替えるよりも、今使っている製品を大事になるべく長く使うことの方が合理的だという話もあるが、その真偽のほどは私にはよく分からない。
もっとも営利企業が一文の得にもならないことに熱を入れるわけはないので、ある程度お為ごかしなエコキャンペーンではあるのだろう。それもこれもモノを売りたいがためなのであろうが、固く締めた財布のひもを、環境にいいからという売り文句だけで消費者にゆるめさせるのは、ちと難しいだろう。
ところで「地球環境にやさしい」というメッセージにはニーズを掘り起こすほどの強さがなくても、「人間関係にやさしい」というメッセージなら気にしいの日本人はばんばんお金を払ってしまうと私は考えている。つまりコミュニケーション環境対応型製品だ。
実際、コミュニケーション環境に余計な負荷をかけない製品は世の中に数多く出回っている。代表的なものは消臭スプレーや制汗剤。余計な臭いを消し、余計な気遣いを防止している。煙の出ないタバコなんてもものもそうだ。あまり味がよろしくないので不評だが、それでも新発売のニュースは愛煙家にとって福音だった。
変わりどころで言えばトイレ用擬音装置。「音姫」という商品名の方が有名かも知れない。排泄の際に発生する音、一般的なオノマトペで表すなら「ぶりぶりぶり」という音を、水洗トイレを流す音を再生することでかき消すというものだ。これでトイレにいる人々の「聴かれちゃった」「聴いちゃった」という余計な気遣いを軽減しているのだ。まっこと日本人の余計な気遣いはとどまることを知らない。
こういった商品にエコマークならぬ、エコミュニケーションマークをつけて売り出せば、人々の購買意欲を大いにそそることだろう。例えば、女性は夏になってくると生理用ナプキンの蒸れた臭いが気になるらしいが、仮に企業が「生理の臭いをふせぐナプキン」というものを開発したとする。
公的機関は然るべき審査の後、この製品にエコミュニケーションマークの表示を許可する。夏場は普通のナプキンよりも、エコミュニケーションマーク付きナプキンの方が多少高くても売れるようになるだろう。その分儲かった企業はエコマークでは果たせなかった当初の目的を果たせるわけだ。
これからは「ちきゅうにやさしい」エコマークではなく「しゅうちしんにやさしい」と書いたエコミュニケーションマークが日本経済の起爆剤になるはずだ。新興工業国に対して比較優位のエコ技術は外貨獲得のために不可欠ではあるが、低炭素社会ならぬ、低気遣い社会を提唱した商売の方が内需は簡単に喚起できますよ。